シックハウス対策講座
講師 アースバンク代表箕浦 健二
1)シックハウス症候群とは?
一言で言えば『室内空気汚染による、身体変調症候群』
その段階を分類すれば
中毒症状‥‥‥‥‥‥‥‥‥頭痛、嘔吐、気管支障害、めまい等
アレルギー、アトピー‥‥‥皮膚炎、喘息、頭痛、倦怠、疲労感等
化学物質過敏症(MCS)‥‥‥大きな暴露体験の後MCSに移行
これは、大変ですよ。(MCS: multiple chemical sensitivity )
(上記分類とは別に、環境ホルモン的問題がある) 参考→シックハウスって何?
歴史的には、、、
アメリカの シックビルデイング症候群(SBS:sick building syndrome )の報告
レジオネラ菌の空気感染によるもの。
日本の動き 健康住宅研究会ガイドラインの策定(平成10年3月)
最近の動向‥‥‥原因の複雑化、更に電磁波の影響も話題になっています。
医学会では、因果関係が未だ確立されていない。
2)どうしてこんな事が発生するのか?
原因として‥‥室内空気汚染(IAQ)
化学汚染物質‥‥‥‥揮発性有機化合物(VOC)等
生物由来汚染物質‥‥カビ、ダニ及びその死骸、排泄物等
(他に‥‥食生活
‥‥衣類
‥‥心因性(これが実はシックハウスだった場合も、、、)
ここでは特に室内空気汚染、なかでも化学汚染物質について取り上げていきます。
化学汚染物質の発生源
‥‥建材、内裝材、塗料、防腐塗料、接着剤、建て具、タタミ、家具
‥‥床下防腐、防虫処理、各種家庭用殺虫剤、洗浄剤、芳香剤等
‥‥燃焼式暖房機器(解放型)、(エアコン‥生物由来)
‥‥その他、断熱剤(グラスウールetc)及びその結露によるカビ発生等
最近この問題が顕著になっているのは別の要因として
‥‥建築材料の工業化(いわゆる新建材の大量生産、製品の安定化)
‥‥住宅の高気密、高断熱化が進んでいる(省エネルギー)‥換気不足
‥‥工期短縮、仕上がりの均質性・安定性、クレーム回避
‥‥住み手がわのメンテナンスフリー志向、表面的清潔志向
‥‥化学汚染物質に関しての情報不足、したがって認識不足
建築材料及び建て方、住まい方について再検討・再構築の時期になっている様に
思われます。製造と廃棄の際の環境に対する影響、負荷を小さくすることもあわ
せて考慮することが必要になってきました。
3)対策として
a: 健康住宅研究会のガイドラインを参考にする‥‥(基礎的な対策)
‥‥ガイドラインはホルムアルデヒドについてはWHOと同等の
0.08ppm以下を採用している。他のVOC、トルエン、キシ
レン及び木材保存剤、ビニール可塑剤、防蟻剤等については
現在、規制値を検討中。
健康住宅研究会 室内空気汚染の低減のための設計・施工
ガイドライン、 同、ユーザーズマニュアル 参考→ガイドライン
b: 疑わしきは避ける‥‥過去に学ぶ‥‥‥‥(消極的な様だけど実は結構現実的)
‥‥歴史的時間に耐えてきた建築材料、建て方を参考にする。これ
は単に昔に還ると言う事ではなくて先人の知恵に学ぶ立場。
現在の技術、また最近の新しい技術で構造、強度、適度な居住性
を確保し乍ら歴史的に実績のある材料などを導入してゆく。
自然系、天然系の材料‥‥木、土、紙、石、布、ガラス、
漆、柿渋、澱粉糊、竹、藁、鉄、銅‥‥‥
言うなれば経験的立場‥‥岐阜県は産地として有利なものが多い。
c: 徹底した情報公開を前提とする‥‥(科学的な立場、困難ではあるが一部必要)
‥‥例えば材料成分に関した情報公開は、現時点では日本で一般的に
流通している材料については一般には殆どなされていない。一方
ドイツの塗料についてなど、その成分は原料から用途まですべて
公開している。‥‥リボス、アウロ等‥‥
‥‥新しい材料であってもその成分、製造時のエネルギーコスト、再生
可能性、廃棄時の環境負荷、そして何よりも建材としての使用時に
身体に悪影響を及ぼさない等、多面的な調査のうえ適非を検討。
‥‥ドイツではこうした情報が一般に公開され週刊誌の様に街頭で
売られている‥‥‥エコテスト誌‥‥
又。スエーデンでは少なくとも25年以上まえから建築用材に
有害物質を含まない事は当然のことだそうです。(知り合いのスエーデン人の話。)
d: 建て方(工法、構法)での対策‥‥(シックハウスになり難い建て方)
‥‥高気密、高断熱の注意‥‥例えばF1の合板、フローリングを使用
してもWHOの基準を満たすためには、1時間に1回の換気が必要と
いわれています。省エネルギーのため、高気密、高断熱を採用する
ときは、ホルムアルデヒド、VOC等ゼロ叉は殆ど含まない建材を
用いるとともに、十分な換気開口が必要です。現在おこなわれている
機械式の計画換気のみでは心配が残ります。
‥‥外壁通気、エアサイクル‥‥一歩進んだ考え方といえる?
外壁の外側に断熱層を設け、その外側に通気層を確保したうえで
壁仕上げを行う方法。この考え方は床下、屋根裏にも当然及ぶこと
になります。在来木造の場合、室内側が真壁、又、塗り壁可能となり、
構造木材の耐久性のためにも室内環境のためにも有利と言えるでしょう。
‥‥基礎、床下の考え方‥‥(特に丈夫で永もち)
構造としての基礎の役割は、沈下、不同沈下を起こさない、そして
耐久性が確保されていること。(実はこれが建築コストとの関係で
結構目こぼしされてしまっている。)最近は、床下全面にコンクリート
版を設けるベタ基礎といわれるものが採用されるケースも見かけるが万能
とも言えないのかも知れない。‥‥力ずくで地面にふたをしてしまって
いいのだろうか‥‥?ともかく、床下は湿気ないように、自然の風通しが
あるか、または床下を空気域的に室内に取り込んでしまうか?他の部分の
条件とも関連して決断に迷うところです。
4)具体的な一例‥‥‥‥‥‥40坪程度の在来工法木造住宅
基礎‥‥コンクリート 、床下は人がはいって動ける様に床高65B、土台は
ネコ(スペーサー)を用いる。床下の通風には十分注意する。
土台‥‥国産の檜‥‥防腐、防蟻処理は行わない
柱‥‥‥国産の檜‥‥死節でなければ節にはこだわらない
梁‥‥‥米松、部分的には杉(断面をワンサイズ大きく)
壁‥‥‥土壁、壁仕上げは主に珪藻土、一部杉板貼りなど
床‥‥‥杉板 t=30、タタミ(防虫シート等使用していないもの)
天井‥‥杉板表し、プラスターボードの上紙クロス叉は和紙張りなど
屋根下地材‥杉板、COFI(カナダ針葉樹合坂、ホルムアルデヒド極少)
屋根‥‥日本瓦、金属板
建て具‥‥杉板貼り等
塗料‥‥柿渋、セラックニス等
断熱方式‥外断熱(重要です)、外壁通気及び棟換気方式
5)空気汚染の測定について
ホルムアルデヒド、VOC等の正確な測定は、測定器が 20〜30万円、
取り扱いにもそれなりの経験が必要。化学物質の特定はできないが、空気
汚染の程度を感知して警報音で知らせる程度のものは安価な機器があります。
(空気汚れセンサー 商品名クリヤー)警報が鳴ったら窓を開けて換気しましょう、
というわけです。
6)発生してしまった有毒ガス対策
材料を取り替える‥‥簡単な様ですが不可能又は困難な場合が多い。
ベークアウト‥‥‥‥部屋の温度をあげ有害物質を燻しだす‥‥効果?
防御、吸着、分解‥‥ホルマリンブロッカー、炭、珪藻土、カテキンクロス
光触媒和紙など
7)最後に‥‥‥‥
健康で快適な生活が出来、永持ちする住まい、資源の有効利用、廃棄時に問題
を出さない等等、このことは 21世紀を目前にして最近耳にする『持続循環型の
社会』の形成につながってゆくものと考えられます。これも最近よく聞かれます
が、『里山文化』と言うのも持続循環社会の良きお手本でしょう。里山の生活
では、資源は毎年更新され持続循環が実現されていました。これを機会に、100
年先、1000年先のことを改めて思いやることも、意味有ることでしょう。
日本でも近年、大学教授、環境分野研究者らを中心に「千年持続学」を唱える
グループが発足、活動開始しています。代表者の赤池学さん(ユニバーサル研究
所、所長)は日本のトップ企業の勉強会でも講演に招かれています。岐阜大学、
名古屋大学にも研究者がいます。この理念を基礎に岐阜県内ではNPO「地球の
未来」が立ち上がりました。
ドイツを中心にした環境共生型で人体にも安全な建築を追求していたら、日本
の伝統的な建築に辿り着いた、という話がありました。先人の知恵を基盤に現代
のテクノロジーを応用していくことが大切です。
PS)『二重の不幸』を発生させないために----
問題が発生してしまってからの対応は、二重の不幸を発生させます。ひとつは
例えばMCS などの被害者を作ってしまう不幸、もうひとつは加害者を作って
しまう不幸です。こうなると両者の利害が対立するため、問題解決には大変な
労力を要することになるだろうし、(責任問題、因果関係の証明、補償問題等、
余計なテーマも出てくる)客観的で、適切な問題解決が困難になるという第3
の不幸まで立ちはだかってきます。これは残念ながら今迄しばしば行われてき
たことです。ここでは1973年からのSwedenの例などについてお話しておきたい
と思います。キーワードは総合的解決、予測と予防です。とても大切なことで
あると考えています。